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2015.08.01 Saturday

サダキチ・ハルトマン

アルチュニアンのTp協奏曲の、東洋的な哀愁漂う旋律を聴きながら、ふと思い出したのがサダキチ・ハルトマンの事。

サダキチ・ハルトマン(Carl Sadakichi Hartmann, 1867.11.8-1944.11.22)は、アメリカの美術家、詩人。30冊以上の著作を残している。

1867(慶応2)年、長崎にて日本人の母オサダ、ドイツ(プロイセン)人の父オスカー・ハルトマンの次男として出生。2歳上の兄タルー(秀太郎?)がいるが、アメリカで商いをしていた事以外の詳細は分かっていない。父のハルトマン氏は幕末史に詳しい方であれば誰もが知る人物であろう。

サダキチが生まれて間もなく母が亡くなり、1868年ハンブルグへ、1882年フィラデルフィアへ、1890年〜1910年代ニューヨーク・グリニッジヴィレッジにてボヘミアン芸術家の王者として著述および奇行、自由恋愛生活を送る。1920年〜40年代はハリウッドで活躍、「バグダッドの盗賊」(1924)で宮廷の魔法使いの役を演じた。1944年、父母の国と交戦中のアメリカ南部フロリダにて死去。

Wikipediaに「バグダッドの盗賊」で魔法使いに扮したサダキチの姿の写真があり、おそらく彼の写真の中では最もよく知られたものの一つではないかと思われる。
(この写真が、上記Tp協奏曲の練習中に思い浮かんだ次第である。)

サダキチ・ハルトマンに関する日本語で書かれた評伝はおそらくこの1冊だけである。
叛逆の芸術家
叛逆の芸術家 世界のボヘミアン=サダキチの生涯 太田三郎 東京美術

この評伝によると、サダキチが扮した魔法使いはガラスと金属で作られた髪飾りを被っていなければならない。これが重さ7kgもあり、サダキチにはこれが耐えられない。その上、撮影が始まるまで30分間ほどはこの姿のままで照明やカメラの位置決めが終わるのをじっと待ち、ようやくリハーサル、本番へと続くわけで、サダキチは髪飾りの重みから来る頭痛に耐えきれなくなってきた。やがて撮影も半ばに差し掛かった時についにやめると言い出した。ここでサダキチにやめられてしまうと、魔法使いが登場する場面を全て撮り直さなければならなくなるので、時間と費用の関係で大きな損害が発生してしまう。やむを得ず監督のダグラス・フェアバンクスはサダキチの給料をひきあげ、サダキチに似た人物に本番が始まるまでに代役としてポーズを取らせることにした。これがハリウッドでスタンド・イン(映画で本番の撮影が始まるまで俳優の身代わりをする役)が使われた最初の例だという。

これでサダキチも文句のつけようがなく、撮影は無事続けられた…が!サダキチはウイスキーを持ってサンフランシスコのチャイナタウンに逃げてしまった。この騒ぎでフェアバンクスは結果として25万ドルの損害を受けてしまった。出来上がった映画ではサダキチが独特の風貌で異彩を放っている。フェアバンクスの苦々しい表情。

サダキチが逃げ出した理由は持病が悪化したからだと称しているものの、実は映画の通俗性に嫌気がさしたのだとも言われている。映画撮影のようなメカニズムの中で働くことは本来サダキチには合わない、誰もかれもが映画に関係したがり、そこから得られる収入も大きいが、それを平然と捨てて行ったサダキチを賞賛する識者も当時はいたということだ。

2回結婚し13人の子を得た。最初の妻ベティは「サダキチはわがままでなげやりで、4分の3が天才で4分の1が悪魔なのです。でも私はサダキチの全てが好きでした」と語っている。サダキチは死ぬ間際まで詩を書いているが、どの詩にも悲哀が漂っており、亡き母への思慕の深さが痛いほど感じられる。

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アルチュニアンのTp協奏曲は、作曲者の少年時代からの友人であり憧れでもあったトランペット奏者に書いたものであるが、その奏者は曲の完成を待たずに兵役で亡くなってしまう。作曲者のそんな悲しみも曲の中に込められているのかもしれない。

コメント

上山草人、お好きでしたか!
この太田氏によるサダキチの評伝には「上山草人はサダキチの手引きでハリウッドに来た」という一文があり非常に興味深いですが、それ以上の事は書かれていません。NFC図書室にもサダキチの資料は他に見当たりません。上山草人やチャップリン、フェアバンクスの資料に何か手がかりがあるかもですが。面白そうなので、新情報が出てきたらここに書きますね。
2015/11/16 7:51 AM by vega
こんな方がいらっしゃったんですね。
僕の好きな上山草人とも親交があったのかも。
2015/11/13 11:31 AM by nm

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