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2018.04.15 Sunday

月の光

ピアノ原曲も決して簡単な曲ではないが、ハープだとどうしてもスピードが落ちてしまう。中間部のペダルチェンジがなかなか覚えられない。
和音をアルペジオにするかセッコにするかも、悩ましい。
ハーモニクスが決まればとても美しく効果的だけど、外した時の"これじゃない感"は大きい。
ハープで弾くフランス作品は、ペダルチェンジがまるでゲームのようなものばかり。心臓に良くない。しかし、きちんと弾ければハープの魅力が存分に発揮できる。

突然の悲しい報せがあった夜から、早いものでちょうど3週間が経った。
あの日以来、今までと同じであるはずの見慣れた風景が、まるっきり違って見えるようになった。
昨夏のコンサートでは、ステージが真正面に見える客席から笑顔でずっと見守ってくれていたのが分かり、この奇跡はあと何十年も続くのだと信じ込んでいた。

その時弾いた演目のうち、Debussy(Salzedo編)「月の光」1曲だけを携帯に録音し、病床でも時々聴いていると言っていた。
ヴェルレーヌの詩にインスピレーションを得て作曲された「月の光」は、仮面の下に秘められた道化の悲しみが美しい月の光にとけ込んで行く様子を音楽にしたものだという。
底抜けに明るく、絶望という言葉を知らないのではないかというほど前向きだった。死ぬことが怖くないとも言っていた彼女も、実は深い悲しみを隠していて、それを示唆していたのかもしれない。
そう考えると、「月の光」も、今まで慣れ親しんできたのとは全く違った曲のように聴こえてくる。

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